【意外と簡単!?】ミックスボイスの出し方と効果的な練習方法

歌は好きだけど、高い声が出せなくて歌が楽しめないという方はたくさんいらっしゃると思います。

特に最近はキーの高い曲が流行っているので、余計にそう感じることも多いのではないでしょうか。

今回は地声で高い声を出す技術である「ミックスボイス」について解説していきます。

言葉自体を聞いたことはあっても、中身の部分はまだまだ謎だらけなミックスボイスを、一緒に解き明かしていきましょう。




ミックスボイスとは

ミックスボイスを一言で定義するなら
「甲状披裂筋の働きを抑えて、声帯筋を優位に働かせて声帯を閉鎖した声」
となります。

いきなり筋肉の名前が出てきて難しいですよね笑

声を出している時に働いている筋肉を一つ一つ説明しながら解説していきます。

声帯を太くする筋肉は2種類ある

我々の声を作り出している声帯は、
伸びる・縮む・閉じる・開く
という四つの運動を行うことで声を出しています。

地声を出している時は縮む運動と閉じる運動を主に行っていて
裏声を出している時は伸びる運動と開く運動が主に行われています。

声帯が完全に開いてしまうと音が出ずに息だけが出る状態(呼吸の時の状態)になってしまうので、裏声の際の声帯の開き具合はベルヌーイ現象が起こせる範囲内に留められています。

それに対して地声は、裏声に比べてハッキリした音質の声を出したいので、声帯を縮めて太くしてから閉じる運動を行っています。
そうすることで声帯が完全に閉じられ、息漏れの無い明瞭な声を出すことができます。

この「縮めて太くする筋肉」が2種類あり、それが先程出てきた「甲状披裂筋」と「声帯筋」です。
(甲状披裂筋は「外甲状披裂筋」、声帯筋は「内甲状披裂筋」と呼ばれることもあります。詳しくは下図をご覧ください)

いわゆる地声は甲状披裂筋を使って声帯を太くしているのに対し、ミックスボイスは声帯筋を使って声帯を太くしているという特徴があります。

それでは、なぜわざわざ筋肉を使い分ける必要があるのでしょうか?

参考文献
武田梵声、『ボーカリストのためのフースラーメソード 驚異の声域拡大をもたらすアンザッツとは?』、株式会社リットーミュージック、2012、23頁

筋肉を使い分けるのは「縮ませすぎない」ため

物体は基本的に
①硬くて②薄っぺらくて③短いほど
振動時の振動回数が多くなり、高い音が出ます。

そのため高い声を出す時の声帯は伸びることによって硬く薄っぺらい状態になっています。

つまり、声帯を伸ばせば伸ばすほど高い音が出るわけです。

もし地声を出している時に声帯を自由に伸ばすことができれば、思いのまま高音を出すことができるという理屈になります。

しかし先程お伝えした通り、地声を出している時は声帯が縮んで太くなってしまっているので、思うように伸ばすことができません。

そのため地声の高音には限界があり、頑張っても男性G4、女性B4辺りがMAXだと言われています。

そこで、縮んで太くする筋肉の使い分けが重要になってくるわけです。

実は、先程登場した甲状披裂筋が働くと声帯は大幅に縮んで太くなってしまうのですが、声帯筋だけが働く分には声帯はそこまで縮まないという特徴があります。

その特徴を利用して、声帯をしっかりと閉じつつ伸ばすこともできる状態にした声が「ミックスボイス」です。

甲状披裂筋の働きを抑えて、声帯筋メインで声帯を閉鎖した場合、地声感を維持できる範囲は男性C5、女性E5辺りまで拡大できます。

最近のJ-POPの音域を調べてみても、地声の最高音は大体この範囲に収まっています。

高音がインフレしつつある近年の楽曲を無理なく歌うためには、ミックスボイスが必要不可欠ということですね。

それでは、どうすれば普通の地声からミックスボイスへ移行することができるのでしょうか。




ミックスボイスの出し方

これは意外と簡単です。
ただ「ボリュームを小さくする」
これだけでOKです。

地声のボリュームを小さくしてミックスボイスへ移行するエクササイズ「エスクラマツィオーネ」をやって、ミックスボイスを発見してみましょう。

男性はC4〜G4、女性はE4〜B4の範囲の中で、好きな音を地声で出してみてください。
この時、なるべく最大の出力で地声を発声するのがポイントです。

音域を限定したのは理由があり、地声・ミックスボイス・裏声という三つの種類の声が存在している音域がこの範囲だけだからです。

フルパワーの地声を発声したら、それをロングトーンします。

ロングトーンの中で、音程を変えずに、声の出力だけをゆっっっくりと、だんだん落としていきます。
これが「エスクラマツィオーネ」です。

最初にフルパワーで出した声は甲状披裂筋がMAXで稼働したいわゆる「地声」になっているはずです。

そこから音程を変えずに出力だけを落とすと、メインで稼働する筋肉が甲状披裂筋から声帯筋へ移り変わります。
これは体が勝手にそうしてくれるのです。

声帯筋への移行が無事に行われると、発声感覚が変わるはずです。

一般的に地声は喉が響き、ミックスボイスは鼻根(眉間のすぐ下)が響くと言われているので、フルパワーの地声は喉が響き、出力を落としていく過程で喉の響きが鼻根の方へ移行していく感覚が感じ取れるのが理想です。

響きの位置に関してはあくまで「一般的に」なのでピンと来ない方もいらっしゃると思いますが、何か発声の感覚が変わった感じが無いと地声とミックスボイスを出し分けられないということになってしまうので、わずかな変化を見落とさないようにエクササイズしていくのが重要です。

出力を落としていくと最終的には裏声になるはずなので、地声→ミックスボイス→裏声という移り変わりをロングトーンの中で感じられれば、エスクラマツィオーネは成功です。




ミックスボイスの失敗パターン

エスクラマツィオーネをやると、上手くいかない場合が必ず出てきます。

代表的な失敗パターンを挙げると

①フルパワーの地声から出力を落とそうとするとすぐに裏声にひっくり返る、もしくはひっくり返りそうになってしまう。

②出力を最小まで落としたのに、裏声にならない。

③出力は小さくできたが、地声と裏声の2種類しか感じられない。

この3つです。
それぞれの解決方法を説明していきます。

①フルパワーの地声から出力を落とそうとすると裏声にひっくり返る、もしくはひっくり返りそうになってしまう。

①に関しては声帯を伸ばす筋肉をトレーニングしていくことで改善する可能性があります。

実は、出力を小さくすることで声帯筋がメインで活動するようになると、声帯筋が声帯を外側方向へ引っ張ってしまい、声帯が開いていってしまいます。
声帯が開いてしまうと裏声しか出せなくなってしまうので、声帯を伸ばすことによって外側方向へ向かう力を矯正してあげることが必要になります。

ミックスボイスは声帯筋の稼働に加えて、声帯を伸ばす力が十分に働かないと出せない声なのです。

声帯を伸ばす筋肉は裏声のトレーニングによって鍛えることができます。

②出力を最小まで落としたのに、裏声にならない。

②に関しても、裏声が弱いという結論になります。
この場合出力が落とせているのでミックスボイスの状態にはなれているはずなのですが、裏声になれない=伸ばす筋力が足りないということになるので、ミックスボイスの状態を維持するのがかなり大変なはずです。

裏声は男性はG3、女性はB3辺りまでは下降できるはずなので、最低限ミックスボイスの音域は裏声をしっかり鳴らせるようにトレーニングしましょう。

③出力は小さくできたが、地声と裏声の2種類しか感じられない。

③の場合は甲状披裂筋を使った本当の意味での地声が無いというパターンです。
自分が地声だと思っていた声が実はミックスボイスだったというパターンですね。
このタイプは大きな声を出すのが苦手な方に多く、A3辺りから自動的にミックスボイスの出し方になっていくのが特徴です。

地声で使われる甲状披裂筋は分厚い筋肉で、振動すると重くて太い音が鳴ります。

ミックスボイスはこの筋肉の働きを抑えてしまうので、音の重さ・太さに関しては地声に劣るのが弱点です。

地声とミックスボイスは音程やシチュエーションによって出し分けられるのが理想なので、地声を出すトレーニングをしていきましょう。

男性はB2より下、女性はE3より下なら地声しか出せないはずなので、低音域を練習して地声の重たさや感覚を身につけてください。
その重たさを残したまま音程を上げていけるのが理想です。

ミックスボイスが出せることがゴールでは無い

②と③に当てはまる方はミックスボイスの出し方ができていることになります。

ミックスボイスが出せない方は出力を落とした瞬間に裏声になってしまうので、地声感を残したまま出力を小さくすることができないからです。

しかし「ミックスボイスの出し方ができる」ことと「ミックスボイスを楽に出せる」ことは全く違います。

ミックスボイスを出せても、維持するのがキツかったり、音色がキンキンとして苦しいそうだったりすることが次の課題になってくるからです。

下顎にある喉締め筋の力を借りてミックスボイスを出しているとこれらの症状が出てくるので、喉締め筋に頼らなくてもミックスボイスを維持できる筋力を鍛えなければなりません。

ほとんどの場合声帯を伸ばす筋肉の不足を補う形で喉締め筋が参加し出すので、裏声のトレーニングは入念に行う必要があります。

経験上ミックスボイスを出せるようになってから歌で使えるミックスボイスになるまでは数年かかる場合が多いので、根気強く練習していきましょう!




ミックスボイスに効果的な練習方法

それでは、ミックスボイスをキープするのに最も重要な筋肉である声帯を伸ばす筋肉のトレーニング方法をお伝えします。

先述の通り裏声のトレーニングになるのですが、この裏声が中々難しいのです。

ミックスボイスコースの生徒さんには、最初に必ず裏声を出してもらうのですが、全く喉締めのない純粋な裏声をいきなり出せる方はほぼ0人です。

ほぼ全ての方があまり良くない音質の裏声を出されます。

音質が良くないということはどういうことかと言うと、伸ばす筋肉以外の筋肉が裏声に関与していて、音に雑音が混じっているということです。

伸ばす筋肉だけではしっかりした裏声を鳴らせないので、他の筋肉が自動的にサポートに入ってくれているということですね。

この状態だと伸ばす筋肉にうまく負荷がかからず、いつまで経っても伸ばす筋肉が成長しないので、弱々しくてもいいから純粋な裏声を出すところから練習はスタートしていきます。

ただ、文章で良い裏声の音質を伝え切るのは中々難しいので、今回は良い裏声が出やすい発声方法をお伝えします。

それが「吸気性裏声」です。

吸気性裏声のやり方

吸気性裏声とは、息を吸いながら裏声を出すということです。

そもそも息を吸いながら声を出すこと自体普段やらない動作なのでなかなか難しいのですが、これができるといきなり最高の音質の裏声が出ることがよくあります。

裏声が全く出せない生徒さんも多くいらっしゃいますが、そういう方も吸う裏声なら必ず出せるようになるのです。

まずはこの吸気性裏声を練習して、正しい裏声の音質を理解するところから始めましょう。

吸気性裏声のやり方ですが、
まずはびっくりした時に「ハッ」と声が出てしまう時を思い出してください。
この時、実は息を吸いながら裏声が出ている可能性が高いのです。
この状態だと息をすぐに吸い切ってしまうのでロングトーンはできないのですが、まずはこの動作で息を吸いながら声を出すことに慣れましょう。

息を吸いながら声を出すことに慣れてきたら、声帯を閉じていって息漏れを減らし、響きのある裏声を出せる状態にしていきます。

声帯を閉じていくには「エッジボイス」が効果的です。

一度息を完全に止めてみて、止めた状態を維持したまま無理矢理吸おうとしてみてください。

「本気で吸おうとすればちょっとだけ息が吸える」という状態がうまく作れると、ガラガラとしたノイジーな音が出るかと思います。

これが吸いのエッジボイスです。

息を吸おうとする時に、息を止めている力を緩めてしまうと一気に息が入ってきてしまうので、それだけ気をつけてください。

あくまで息を止めたまま吸おうとするのです。

吸いのエッジボイスをいつでも出せるくらい慣れてきたら、いよいよ裏声にしていきます。

まず吸いのエッジをボイスを出して、そこから少しだけ閉鎖感を緩めて裏声にひっくり返すようなイメージです。

うまくできると
①柔らかく丸い音質
②耳がビリビリするくらい豊かな響きがある
③喉締めたようなつらさが全くない
④頭の後ろの方で響く

この4つの特徴を兼ね備えた素晴らしい音質の裏声が出せます。

この4つの特徴を兼ね備えた裏声でないと、声帯を伸ばす筋肉にしっかりと負荷をかけることができません。

逆に言えば、余計な筋肉の助けを借りず声帯を伸ばす筋肉だけを使って出せている裏声は、必ず上の4つの特徴を兼ね備えます。

裏声の音質の特徴を頭と体の両方で理解し、正しい音質でトレーニングしていきましょう。




ミックスボイスを習得するメリット

ミックスボイスを習得して得られるメリットは高音を出せるだけではありません。

他にもいくつかメリットがあります。

高音を優しく出すことができるようになる

地声は音程を上げていくと自然とボリュームが大きくなってしまいます。
そうしないと音程が維持できないからです。

そのため、高音を優しく出すことができません。

高音が続くサビの中でも、例えば語尾の部分などは優しい声で着地しないと乱暴な印象の歌になってしまう場合が多々あります。

歌の練習をたくさんしているのに、いまいちプロットぽくならないという悩みを抱えている方は、ミックスボイスを習得していないがために適切な抑揚が付けられていないのかもしれません。

発声技術の向上は、ボーカルテクニックの向上にもつながっているのです。

繊細な音質が出せる

甲状披裂筋を使った地声は喉が響くので、良い意味でも悪い意味でも音質が太くて重くなります。

例えばロック系の曲や、迫力が必要な箇所などはミックスボイスより地声を使った方が様になる場合があります。

しかし、終始重くて太い音質だと乱暴に聞こえてしまう部分や、ぶっきらぼうなに聞こえる部分がどうしても出てきてしまいます。

ミックスボイスは喉ではなく鼻根が響き、地声に比べて繊細な印象の声になるので、バラードや綺麗な雰囲気の曲によく合います。

どんな曲でも自分の歌のように歌いこなせるシンガーになるために、地声もミックスボイスも両方習得し、自由自在に出し分けられるようになりましょう。

喉の負担が減らせる

地声は声帯が最も分厚く擦れ合う発声方法なので、声帯への負担も1番大きくなります。

ミックスボイスは地声ほど声帯が分厚くならないので、地声で歌うよりも声を長持ちさせることができます。

声枯れを気にせず長時間歌えるようになることも、ミックスボイスの大きなメリットです。




まとめ

いかがでしたでしょうか?

実際にエスクラマツィオーネをやってみるとわかりますが、ミックスボイスを体験するだけなら意外と簡単にできたという方も多いのではないでしょうか。

しかし、ミックスボイスを維持した状態で一曲歌い切るとなると、相当なトレーニングが必要そうだということも体感していただけたのではないかと思います。

これは発声に限ったことではないですが、筋力トレーニングは正しいフォームで行うことが非常に重要なので、ボイストレーナーの指導の元で行うのが1番効率的です。

DECOミュージックスクールではミックスボイスを習得したトレーナーがマンツーマンでレッスンしていくので、生徒さん一人一人に合わせた最適な方法でミックスボイスへ導いていきます。

気になった方は是非無料体験レッスンへお越しください!

それでは!