ファルセットとウィスパーボイスの違いと活用法

みなさんこんにちは、DECO MUSIC SCHOOLです。

今回は高音発声時に使うファルセットとウィスパーボイスの違いについてお話ししていきます。

より楽しく歌うために、しっかり知識を深めていきましょう!

ファルセットとウィスパーボイスはどう違う?

「ファルセットとウィスパーボイスって、どっちも息っぽい声なんでしょ?」と思われがちですが、実際には全く異なる仕組みと目的を持つ発声です。

まずはそれぞれの違いを整理しておきましょう。

ファルセットは「軽やか伸びる声」

ファルセット(裏声)は、声帯の一部だけが振動する発声方法です。

地声のような太さや力強さはありませんが、高音域でも軽やかに声が伸びるのが特徴です。

クラシックやR&B、最近のJ-POPでも、感情の繊細さを伝える場面でよく使われています。

この声を出す時は、声帯は閉じきらず、息がある程度漏れながらも震える状態になります。

つまり「ちょっと息っぽくて高いけど、ちゃんと“音”として聞こえる」状態です。

さらに言えば構造としてはフルートや空き瓶を吹いた時と似ていると思います。

空間に響かせる要素が強いですね。

ウィスパーボイスは「ささやくような声」

一方のウィスパーボイスはミックスボイスの仲間として考えます。

ミックスボイスの時は「声帯閉鎖」といって声帯にある隙間をピチッと閉じて前に飛ばすように発声します。

すると鼻のちょうど骨がなくなるところを触った時、ジリジリ震える感覚があります。

まずこの発声をしながら、そのまま息を漏らすと声帯のピチッと感がなくなり、ウィスパーボイスになります。

構造としてはオーボエなどのリード楽器と同じだと思ってください。

そのリードがあまり震えていない時の音です。

ファルセットほど響きませんが、空気とニュアンスを届けるにはぴったりだと思います。

「切なさ」や「距離の近さ」を演出する時に使ってみてください。

音の役割と使い分け

ファルセットは「高音域を軽やかに歌いたいとき」、ウィスパーボイスは「息の混じったニュアンスを強調したいとき」に使うのが基本です。

例えば、Aimerさんのような透明感を出したいときにはファルセットが活躍し、藤井風さんのように感情を“こっそり打ち明ける”ような歌い方にはウィスパーボイスが映えます。

この違いをはっきり感じたのは、当時自分には歌唱が難しかったmariah careyの楽曲を練習していた時です。

息っぽいから全部息っぽく歌っていたら、高音部分でどうしても歌えない箇所が出てきました。

その時やっとファルセットとの違いを感じました。

なので、もし使い分けがわからないなどの悩みがあれば、高音がたくさん使われている楽曲(現状歌えなくてもいい)にチャレンジしてみてください。

その時は表現も含めてオリジナルに忠実に練習してください。



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ファルセットの出し方と感覚

ファルセットを出すには、まず「力を抜く」ことが重要です。

地声のように声帯をしっかり閉じず、柔らかく息を送りながら鳴らします。

声帯は閉じないので芯のないフワッとした響きになります。

練習方法としては、気の抜けた声で「はー」と高音域を出してみてください。

この時、イメージが重要です。

後頭部あたりから声が出ると考えてください。

空気はたっぷりでいきましょう。

そしてまるで自分が洗濯物になったような気持ちで、洗濯竿にファサッとかけられてください。

動きも洗濯物になりきると声が出やすいです。

声が裏返っても構いません。

そこから少しずつ安定して出せるようになっていきます。

ウィスパーボイスの出し方と注意点

ウィスパーボイスは「話すように息を出す」のがポイントです。

病院の待合室で2m先の人にこっそり話しかけるようなつもり発声してみましょう。

息っぽすぎると歌として聴きづらくなるので、声の要素はしっかり忘れないようにしましょう。

ついでに声と空気の割合を変える練習もすることをお勧めします。

100%の力で発声しているうちの60%が声、40%が空気次は50%:50%…みたいな感じで割合をグラデーションで変えながら練習してみてください。

お気に入りのウィスパーボイスが見つかると思います。

ただし注意点として、これは非常に喉が乾燥しやすく、力みが入りやすい発声でもあります。

長時間の使用は避け、喉を潤しながら少しずつ練習することが大切です。

ファルセットとウィスパーボイスを出すためのポイント

どちらの声も、実は“基礎的な発声”が整っていないと不安定になります。

とくに「腹式呼吸」「共鳴」の2つは最低限身につけておきたい要素です。

高音練習をする前にこの2点を確認した上で練習すると、コツを掴みやすいと思います。

腹式呼吸の確認ポイントは、吸った時にちゃんと「お腹が膨らんでいるか」「胸が上がっていないか」、吐いている時に「お腹が凹んでいってるか」「吐いている息が常に均等か」あたりです。

共鳴はざっくり言えば「響いてる感」です。

主に響くのは、鼻腔、口腔、喉の3箇所です。

どこを使っているのかはちゃんと把握しておきましょう。

高音域は鼻の共鳴が増えるので、鼻とその周辺に響いている感覚があれば、まずはokです。

さらに細分化すると鼻よりも上に響きがくることがあります。場所は頭蓋骨です。

ただ頭蓋骨は面積が広いので、具体的に「どこに、どんな声が、どう響いているのか」自分の中で明確なイメージを持っていてください。

(例)後頭部に直径10cmくらいの面積で、空気7割くらいの声が、小突かれた時くらいの圧力で広がるように響いている。

自分の感覚で大丈夫なので、持っている手札がすぐに出せるように、イメージしたらその音がちゃんと出る準備をしておくことが肝心です。

曲にどう取り入れる?活用のコツ

最後に、ファルセットとウィスパーボイスをどんな場面でどう活かせばよいかについて掘り下げます。

テクニックとして使うのではなく、感情のツールとして使うのが一番のポイントです。

ファルセットは「開放感や浄化感」を出すために

ファルセットは、曲の中で空気を一気に抜けさせるような“開放感”を演出するのに最適です。

たとえばサビに向かう転調直前や、最後の一声を空に放つような場面でとても効果的です。

Aimerさんのように、ファルセットがそのまま表現スタイルになっている歌手もいますよね。

ファルセットのお勧めの使い方は、文中の一文字だけ又は一拍だけ使うこと!これだけで結構プロっぽく聞こえます。

気をつけたいのは切り替えの速度です。

時間をかけてぬめっと切り替えると音程やリズムがずれやすいです。

瞬間的に切り替えるようにしましょう。



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ウィスパーボイスは「親密さ」や「余白」を伝えるために

ウィスパーボイスは「距離の近さ」を演出できます。

いわば“耳元で話しかけられている”ような効果があります。

バラードや語りパート、または余白を生かしたアレンジの中に入れると印象的になります。

ただし入れすぎると全体がぼやける危険もあるので、スパイスとして利用するか、サビを目立たせるために、周りを少し抑える役割でしれっと使うといいとおもいます。

「切り替え」の精度を高めることが表現の鍵

重要なのは、地声からファルセット、あるいはウィスパーボイスへの“切り替え”の精度です。

この切り替えが滑らかであればあるほど、歌の中の感情の流れが自然に伝わります。

精度が低いと曲がぶつ切りに聞こえたり、逆にぬめっと聞こえたりします。

また切り替えに自信がなくなると、その部分がしょぼくれて聞こえたり、毎回歌い方が違ってしまいます。

まずはそれぞれの発声を単品で練習し、そのあと曲のテンポを落として切り替えの練習をしてください。

そして徐々にテンポを上げていくと精度を維持したまま曲に落とし込めると思います。

特にPOPSの良さは、「禁忌がないこと」です。

一曲で何色でも声色を使って構わないんです。

瞬時に違和感なく色んな音色を使い分けられることは、POPSを歌うにあたって最大の特徴であり有利な点だと思います。

この観点で「声色の切り替え」は必須スキルだと思います。



よくある質問 Q&A

Q1. ファルセットとウィスパーボイスって、どっちが先に練習したほうがいいですか?

A. 声帯の負担や安定性を考えると、まずはファルセットから練習するのがおすすめです。ファルセットは息と声のバランスをつかむ練習にもなり、その後のウィスパーボイスにも活かしやすくなります。ただ、どちらも「基礎発声」が整っていないと出しづらいので、腹式呼吸と共鳴を先に見直しておくと◎です。

Q2. ウィスパーボイスって囁き声とどう違うんですか?

A. 一般的な囁き声は「声」ではなく「息」だけですが、ウィスパーボイスは「声と息のブレンド」です。つまり、歌としてちゃんと“音楽”として成立するように、声の要素を含んでいるのがウィスパーボイス。単なる囁きでは、音程やリズムが取りづらくなります。

Q3. 喉が弱いんですが、どちらの発声が負担が少ないですか?

A. どちらも喉の状態によっては負担がかかる場合がありますが、無理に力を入れないファルセットの方が比較的優しいと言われています。ただし、個人差もあるので、どちらも少しずつ・短時間から始めるようにしましょう。喉が乾燥しやすい人は特にウィスパーボイスを長時間使わないよう注意してください。

Q4. ファルセットとウィスパーボイスの違いが、自分の声ではよく分かりません。

A. 自分の録音を聴いて確認するのが一番です。ファルセットは「遠くまで飛ぶような軽やかさ」があり、ウィスパーボイスは「近くでそっと話しているような親密さ」があります。また、ファルセットは鼻腔や頭に響く感覚、ウィスパーボイスは息が口先で流れていくような感覚が目安になります。

Q5. 曲の中でどこに使えばいいか分かりません。

A. ファルセットは「気持ちを空に放つ瞬間」や「力を抜いて浮遊感を出したいとき」に、ウィスパーボイスは「内緒話をしているような距離感」や「余白を感じさせたいとき」に使うと効果的です。まずは1か所、歌詞の意味とリンクしているところに使ってみましょう。やりすぎず、1フレーズだけ試すのもおすすめです。

まとめ

ファルセットとウィスパーボイスは、「ただの高音」「ただのささやき」ではありません。

それぞれに明確な構造と目的があり、表現としての武器にもなります。

ぜひ、今日から少しずつ取り入れてみてください。

歌についてもっと知りたい方は歌が上手くなるトレーニングについてもご覧ください。



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